Pick Up Artist
梶原 加奈子 Kanako Kajihara
テキスタイル・絵画



 

北海道の自然が魅せる色彩や質感を、
テキスタイルとアートで体現。

 自然の色彩や質感からひらめきを得たテキスタイルで人々に感動や楽しさ、癒やしを与えることを目指し、自社ブランドの展開やテキスタイルメーカーのブランディング、コンサルティングを行っています。また、南区にショップ、レストラン、宿泊施設を備えた「COQ(こきゅう)」を開設し、自然の中でリラックスできるライフスタイルを提案しています。

 私の幼少期はモノづくりが好きな母から影響を受け、絵を描いたり物語を考えたりすることに熱中していました。高校生の時、テキスタイルデザインという分野を知り、その道を目指すことに。美術大学に進学し、全国から集まる洗練された同級生たちの中で個性を出していくため、北海道の自然や昆虫をテーマに素朴さを残したデザインを追求しました。研究を進める中、光を感じる色や生地のテクスチャーで心を照らすように明るくするイッセイミヤケの思想に惹かれ、卒業後にデザイナーとして就職しました。その後に大学の先生と会社の推薦で、英国の王立芸術大学院(RCA)に留学する機会を得ました。RCAは産学連携に力を入れており、世界中の企業から商品開発の依頼が集まります。その中で関わったプロジェクトの一つに南アメリカのグアテマラでの企画開発があり、市場で受け入れられるものを生産し、ロンドンのインテリア製品の販売会社にプレゼンしました。デザイナーが工場側に立ちアイデアを形にすることで仕事や雇用が生まれ、地域創生につながる経験が心に残りました。

 帰国後は日本でも地域創生に貢献したいと思い、北海道を拠点に国内の繊維産地を訪問しました。当時の日本の繊維工場は問屋やファッションデザイナーの発注で生地を作る受け身の体制で、工場から企画を発信するものではないという認識でした。しかしRCAの先生は、今のままの意識では人件費が高く少子化問題がある日本の繊維業界は衰退すると予測。そのため、伝統的な技術を大切にしながらも工場が自社で企画販売ができるように根気強く提案していきました。

 道を開くには困難も伴います。本州の繊維産地を訪ねても思うようにいかない中、週末に北海道に帰ると空が広く、ようやく深呼吸ができると感じました。自分たちのクリエイションを発信する拠点を作る時、その時の思いからコンセプトは「呼吸」に。南区の自然の中で、心地よい空間、深呼吸できる場所、持続的であることを表現しています。

 私のテキスタイルは、学生時代から一貫して自然がベースにありました。心が癒やされる色彩を基調に、暮らしの心地良さを追求し、幸せを支えられる製品を残したいと考えています。皆さんになじみのある製品の一つとして、コープさっぽろ様の〝エコマイバッグ〟は10年間デザインをご依頼いただいています。

 COQに拠点を構えてから、周囲の森や川からたくさんヒントをもらうようになりました。この場所で感じたことを絵にする活動も始めています。テーマは希望と光。風景や出来事を抽象画で表現し、コンセプトを文章として伝えています。今後は、日本の伝統と革新を融合した文化をデザインやアートに表現し、海外に積極的に発信したいと考えています。COQにも海外からお客様が訪れますし、東京中目黒でもCOQの空気感を表現した店舗を運営していますが、海外の方に多く立ち寄っていただいており、日本の感性に興味を持たれています。

都市と自然が融合する南区から、
表現の可能性が生まれる。

 札幌に拠点を持つことを考えた時、交通アクセスが良く、自然とアートの融合を体現する札幌芸術の森がある南区が候補に。中でも、国道に面していながら原生林が広がり、真駒内川が流れるこの場所が、私の表現したいデザインと重なりました。地域とのつながりとして、芸術の森小学校の児童から野菜のデザートのアイデアを募集し、選ばれた方とご家族をレストランに招待しています。地域の児童や学生たちが、クリエーションを身近に感じることで将来の夢に出会うきっかけになればうれしいです。 

 周辺で活動するアーティストも多く、COQの設計を依頼した鈴木理さん(7ページ参照)も近くにアトリエを構えています。ミラノ市内の企業やデザイナーが展示を行う「ミラノサローネ」のように、南区でもアーティストが拠点を開放する南区アートフェスのような催しも実現できると面白いと思います。(談)


1973年  札幌市生まれ
1998年– 多摩美術大学デザイン学部染織科卒業
– (株)イッセイミヤケ テキスタイル企画入社
2002年渡英
2003年英国の王立芸術大学院(RCA)ファッション&テキスタイルデザイン修士課程入学
2005年– 英国の王立芸術大学院(RCA)ファッション&テキスタイルデザイン修士課程卒業
– 英国のデザインコンペTEXPRINT2005で新境地開拓部門のグランプリ受賞
– フリーランスとして活動をスタートし欧州企業にデザインを提供する
2006年– 帰国
– KAJIHARA DESIGN STUDIOを創業
2007年テキスタイルブランドKANA COLLECTIONを立ち上げ、欧米のハイメゾンに向けて販売開始
2013年– パリのテキスタイルコンペ PREMIERE VISION PV Awards The Grand Jury Prize受賞
– コープさっぽろ マイバッグのデザインをスタートする
2015年(株)KAJIHARA DESIGN STUDIO 設立
2017年– 南区常盤の森にCOQ複合施設を立ち上げる
– JAPAN TEXTILE CONTEST審査員長就任
2018年京都とフランスの交流アーティスト・イン・レジデンス Villa Kujyouyamaに参加する
2020年第42回繊研賞を受賞
2021年日本のファクトリーブランドのデジタル販売支援事業としてCRAHUGを立ち上げる 
2022年COQ KANAKO KAJIHARA アパレルラインを立ち上げる
2023年– COQ東京中目黒店を立ち上げる
– 自身の思想を反映したART活動を開始する

梶原 加奈子(かじはら かなこ)

札幌常盤の森の中にショップ・ダイニング・ゲストハウスの複合施設「COQ」を立ち上げ、自然と共に過ごすエシカルライフスタイルからカラーヒーリング&サーキュラーライフを発信。


COQ(こきゅう)
札幌市南区常盤5条1丁目1-23
TEL 011-252-9095
E-mail contact@kajihara-design.com
http://www.kajihara-design.com

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