太陽と木と、自分とのつながり。
そうしたものが現れたらと思っています。
高さ4m、直径は120cmほどでしょうか。この木の幹のなかに、身体ごと潜り込んで彫り進めています。貫通させた後は立てて、太陽の光を取り込むようにしたいと思っているんです。太陽と、木と、そして自分と。その繋がりのようなものを探ってみたいというのが現在、取り組んでいるこの作品のテーマです。
大阪芸術大学を卒業した後、和歌山県の森林組合に入組。木のこと、山のことを学びたいと思いました。毎日、チェーンソーとお弁当を持って2時間ほどかけて山中に入り、鬱蒼とした木立のなか杉とか檜の間伐をします。木を切り倒すと、そこに空からズバッと光が差し込んでくる。1本の木の命と、もっと大きな自然という命の間で感じたことが今の作品制作に大きな影響を与えていると感じます。
木への憧れを抱いたのは、小学2年生の時に手塚治虫の「火の鳥鳳凰編」のアニメーションを観たことがきっかけかもしれません。我王が鳳凰を彫っているシーンに興味を抱き、自分もいつか彫刻をやってみたいと思った記憶があります。
当時、私は南区真駒内の柏ヶ丘で暮らしていました。自宅が小高い崖の上にあり、坂道を駆け降りるように学校に行くのですが、周囲には鬱蒼とした木々の緑があって。そんな原風景も、木や自然について考えるきっかけになっていますね。
中学校に上がり、粘土で手を作る授業のとき、自分には創作の才能があるんじゃないかと感じたことも覚えています。勝手に思い込んでいただけですが、その勢いで大阪芸大へ進んだというのが、本当のところです(笑)。
現在は、道東の中札内高等養護学校で教員をしながら作品づくりを行っています。森林組合時代に、ねむの木学園の作品の展覧会を観る機会がありました。子どもたちの作品は、どれもおもしろく、ここでも創作の刺激を受けました。そして、こうした子どもたちと触れ合えるなら教員もいいなと思ったんですね。
私自身は売れるものはつくれないし、つくりたいものと向き合いたかったので、食べていくという現実的な問題も考えて1年間、真駒内の実家で教員採用試験の勉強に取り組み、2006年に紋別養護学校きたみ学園(現・北見支援学校)に職を得ました。本格的に、自分の作品づくりに取り組めるようになったのは、この頃からです。
中札内に転勤になったのは2011年。十勝は北海道のなかでも現代アートが盛んだと感じ、何人か知り合いもいたので、創作の場としてこの地に根を下ろすことにしました。
冒頭でお話しした作品は単体ではなく、ほかにも木をたくさん立てて、そのなかを太陽の光が貫通するというイメージです。できれば夏至の頃に、オープンアトリエのようなスタイルで展示してみたいと思っているんです。
木の切り株に残る年輪は、星の運行のようにも見えます。樹齢200年の樹木なら、200年分の星の光の軌跡。そこには、星を見上げながら木が思ったことが刻まれている。そんなことを表現できないかと、最近は考えています。
オリンピックの真駒内の風景にも
創作の刺激を受けています。
私が、創作にあたって刺激を受けたこととして、子どもの頃に暮らしていた真駒内の空気感のようなものがあります。札幌オリピックのために建設されたユニークな形の集合住宅、真駒内公園にあったオレンジ色の椅子など、当時のポップアートと周囲の自然が絶妙に融合しているというか、子どもだった自分にとって、ちょっとワクワクするような雰囲気もありました。そこで得た感覚のようなものが、作品にも影響を与えている気がします。南区には石山緑地など、その場所の力のようなものを感じるロケーションがあります。いつか、そうしたところで創作ができればいいなと思っています。 (談)
1978年 | 札幌市南区真駒内に生まれ |
2000年 | 西宮美術展 奨励賞受賞 |
2002年 | 大阪芸術大学美術学部立体造形学科卒業。 和歌山県高野町森林組合に入社 |
2006年 | 北見支援学校(旧紋別養護学校きたみ学園分校)にて勤務。 北見市にて制作を再開 |
2008年 | 第83回全道展入選 |
2009年 | 生徒との展覧会 「ひらかれている」茶廊法邑 (北海道・札幌市) |
2010年 | 生徒の個展を企画 蛯子陽太「くろながいねこからの招待状」NHKギャラリー (北海道・北見市)。 個展「ひらかれている」FLOWMOTION(北海道・帯広市) |
2011年 | 個展「ひとつの中心と呼吸する」 ギャラリーとかるね(北海道・帯広・豊頃) 北海道中札内高等養護学校に転勤、 中札内村で制作を行うグループ展「茶廊法邑 開廊7周年記念展覧会」 茶廊法邑(北海道・札幌市)、 個展「ひとりのひとにひとつずつの」 北網圏北見文化センター美術館(北海道・北見市) |
2013年 | グループ展「緑と風の器展」 FLOW MOTION(北海道・帯広市) 「in theLIGHT / in the SHADOW」 北海道立帯広美術館(北海道・帯広市) |
2014年 | グループ展「防風林アートプロジェクト」 帯広市の郊外・防風林の中でインスタ レーション(北海道・帯広市) 「モケラモケラ企画若手作家シリーズ1 からすと山 羊と鉛 見上げれば空展」 (Art Space / café MOKERA MOKERA/旭川市) |
2015年 | 「The open plane」十勝の明日(帯広市) 「六花ファイル」(北海道札幌市/六花亭 六花文庫) |
2017年 | 「ひかりの抜け道」(大丸藤井セントラル/北海道札幌市) |
2018年 | 北海道教育大学大学院 教育学研究科 教科教育専攻 美術教育専修空間造形 研究室修了 「ピカリ展-12人の切り口-」 (丸彦渡辺建設 まるひこアートスペース /札幌) |
2019年 | 「第38回帯広市民芸術祭」招待作家展 【藤原千也展-ふたたび生成のうちに-】 (帯広市民ギャラリー/北海道帯広市) 「はこだてトリエンナーレ」【藤原千也展- 光景-】 (北海道木古内町 郷土資料館/北海道上磯郡木古内町)。 「JRタワー アートボックス」 (JR札幌駅/北海道札幌市) 「松本道子/ダンスと藤原千也/ 彫刻コラボレーション」 (藤原千也のアトリエ/北海道中札内村) |
2020年 | 第23回岡本太郎現代芸術賞特別賞受賞 「第23回岡本太郎現代芸術賞展」 (川崎市岡本太郎美術館/神奈川県) 「彫刻家 藤原千也 特別企画展」 |
2021年 | [札幌美術展 アフターダーク] (札幌芸術の森美術館/ 北海道札幌市) |
藤 原 千 也 アトリエ
北海道河西郡中札内村東1条南4丁目1
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